はじめに
前回のレッスンで、自動化の3つの基本要素(トリガー・アクション・条件)を学びました。
でも、複雑な自動化を考えるとき、頭の中だけで整理するのは大変ですよね。
そこで登場するのが「フローチャート」です!
フローチャートは、処理の流れを図で表現する方法。まるで地図のように、スタートからゴールまでの道筋を視覚的に示してくれます。
フローチャートって何?
身近なフローチャート
実は、私たちは日常的にフローチャートを見ています。
例1:駅の乗り換え案内
例2:料理のレシピ
例3:家電の取扱説明書
フローチャートのメリット
- 複雑な流れが一目で分かる
- 他の人に説明しやすい
- 問題点や改善点を見つけやすい
- 言語の壁を越えて理解できる
フローチャートの基本記号
フローチャートには、世界共通の基本記号があります。たった6つ覚えるだけでOK!
1. 開始・終了(角丸四角形)
使い方:処理の始まりと終わりを表す 例:「スタート」「完了」「終了」
2. 処理(四角形)
使い方:実行する動作(アクション)を表す 例:「データを保存」「計算する」「ファイルを作成」
3. 判断(ひし形)
使い方:条件分岐(もし〜なら)を表す 例:「金額は1万円以上?」「平日?」「承認済み?」
4. データ(平行四辺形)
使い方:入力や出力されるデータを表す 例:「注文データ」「レポート」「フォーム入力」
5. 矢印(流れ線)
使い方:処理の流れる方向を示す ポイント:基本は上から下、左から右
6. 結合子(円)
使い方:離れた場所をつなぐ、ページをまたぐ時に使用 例:大きなフローチャートを分割する時
基本的な描き方のルール
ルール1:上から下、左から右
ルール2:判断は必ず分岐する
ルール3:線は交差させない
❌ 悪い例:線が交差している
✅ 良い例:線が交差しないように迷回している
ルール4:シンプルに保つ
- 1つの記号には1つの処理
- 長い説明は避ける
- 必要に応じて詳細は別図に
実践:簡単なフローチャートを描いてみよう
例1:朝のアラーム
例2:自動返信メール(条件付き)
より実践的なフローチャート
例3:在庫管理の自動化
例4:経費申請の承認フロー
フローチャートを描くコツ
1. まず言葉で書き出す
フローチャートを描く前に、日本語で流れを整理:
1. 毎朝9時になったら
2. 昨日の売上データを取得
3. もし売上が目標以上なら
- 「目標達成!」とSlack通知
4. そうでなければ
- 「もう少し頑張りましょう」と通知
5. データをスプレッドシートに記録
2. 大きな流れから描く
最初は細かいことは気にせず、大まかな流れを:
3. 徐々に詳細を追加
4. エラー処理も忘れずに
プロのコツ
- 紙に手書きで始める(修正しやすい)
- 付箋を使って並べ替えながら考える
- 色を使い分ける(正常系:青、エラー系:赤)
- 番号を振って順序を明確に
デジタルツールでの作成
無料で使えるツール
-
Google Drawings
- Googleアカウントがあれば無料
- 共同編集可能
- テンプレートあり
-
draw.io (diagrams.net)
- ブラウザで使える
- 豊富な図形
- 日本語対応
-
Microsoft PowerPoint/Google Slides
- 図形機能で簡単に作成
- プレゼンにも使える
-
紙とペン
- 最も手軽
- アイデア出しに最適
- スマホで撮影して共有
描画のショートカット
多くのツールで使える便利な機能:
- Ctrl+D:図形を複製
- 矢印キー:細かい位置調整
- Shift+ドラッグ:まっすぐな線を引く
- グリッド表示:整列しやすくなる
よくある間違いと対策
間違い1:すべてを1つの図に詰め込む
❌ 問題:巨大で複雑な図になり、理解困難
✅ 対策:
- メインフローと詳細フローを分ける
- 結合子を使って図を分割
- 1画面に収まるサイズを心がける
間違い2:矢印の向きが不明確
❌ 問題:どちらに進むか分からない
✅ 対策:
- 矢印は必ず矢先をつける
- 基本は上から下、左から右
- 逆流する場合は明確に示す
間違い3:判断の出口が1つ
❌ 問題:YesかNoの片方しかない
✅ 対策:
- 判断は必ず2つ以上の出口
- すべての可能性を網羅
- 「その他」の場合も考慮
実践演習:あなたの業務をフローチャートに
ステップ1:題材を選ぶ
あなたの日常業務から1つ選んでください:
- 朝のメールチェック
- 定期レポートの作成
- 顧客からの問い合わせ対応
- 会議の準備
ステップ2:要素を洗い出す
- トリガー:何がきっかけ?
- アクション:どんな作業?
- 条件:どんな判断?
- データ:何を入力/出力?
ステップ3:フローチャートを描く
- 紙に下書き
- 基本記号を使って清書
- 他の人に見せて意見をもらう
今日のまとめ
フローチャートの重要ポイント
- 基本記号は6つ(開始/終了、処理、判断、データ、矢印、結合子)
- 上から下、左から右が基本の流れ
- 複雑な処理も視覚的に整理できる
- まず日本語で考えてから図にする
次回予告
次のレッスンでは、「入力と出力:データの流れ」について学びます。
- データはどこから来て、どこへ行くのか
- 異なるシステム間のデータ連携
- データの変換と加工
- 実践的なデータフローの設計
フローチャートとデータフローを組み合わせれば、本格的な自動化の設計ができるようになります!
チャレンジ問題
問題1:記号を当てはめよう
以下の要素に適切な記号を選んでください:
- 「注文を受け付ける」
- 「在庫は十分か?」
- 「処理開始」
- 「顧客データ」
- 「次のページへ続く」
答えを見る
- 「注文を受け付ける」→ 処理(四角形)
- 「在庫は十分か?」→ 判断(ひし形)
- 「処理開始」→ 開始(角丸四角形)
- 「顧客データ」→ データ(平行四辺形)
- 「次のページへ続く」→ 結合子(円)
問題2:フローチャートを読み解こう
以下のフローチャートは何を表していますか?
答えを見る
エアコンの自動制御
- 温度を測定する
- 28度以上なら冷房をONにする
- 28度未満なら冷房をOFFにする
- 処理を終了する
これは、室温に応じて冷房を自動的にON/OFFする仕組みを表しています。
問題3:フローチャートを完成させよう
「メール自動振り分け」のフローチャートを完成させてください:
答えの例
お疲れさまでした!フローチャートを使えば、どんな複雑な自動化も分かりやすく設計できます。次回も楽しみにしていてください!