はじめに
前回のレッスンで、ワークフロー自動化が「仕事の流れを自動で実行すること」だと学びました。
では、どうやって「自動」で動くようにするのでしょうか?
実は、すべての自動化は、たった3つの基本要素でできています。
それが:
- トリガー(きっかけ)
- アクション(動作)
- 条件(もし〜なら)
今日は、この3つの要素を、身近な例を使ってマスターしていきましょう!
トリガー(Trigger)= きっかけ
トリガーとは?
トリガーは、自動化が「スタート」するきっかけのことです。
「〇〇が起きたら」の「〇〇」の部分がトリガーです。
日常生活のトリガー例
自動ドア
トリガー:人がセンサーの前に立つ
↓
結果:ドアが開く
部屋の照明(人感センサー)
トリガー:人の動きを感知
↓
結果:ライトが点灯
スマホの画面
トリガー:端末を持ち上げる
↓
結果:画面が自動でON
トリガーの特徴
- 何かが「起きる」「変化する」瞬間
- 自動化の「スタートボタン」的な役割
- 人の操作、時間、データの変化など様々
ビジネスでよく使うトリガーの種類
1. 時間トリガー
例:
- 毎朝9時になったら
- 毎週月曜日の10時になったら
- 毎月1日になったら
- 30分ごとに
使用シーン:
- 定期レポートの作成
- リマインダーの送信
- データのバックアップ
2. イベントトリガー
例:
- メールを受信したら
- ファイルがアップロードされたら
- フォームが送信されたら
- 注文が入ったら
使用シーン:
- 問い合わせ対応
- 注文処理
- 申請承認
3. データトリガー
例:
- 在庫が10個以下になったら
- 売上が100万円を超えたら
- 温度が30度以上になったら
- フォロワーが1000人に達したら
使用シーン:
- 在庫管理
- アラート通知
- 目標達成通知
4. 手動トリガー
例:
- ボタンをクリックしたら
- 特定のコマンドを入力したら
- QRコードを読み取ったら
使用シーン:
- 任意のタイミングでの実行
- テスト実行
- 緊急処理
アクション(Action)= 動作
アクションとは?
アクションは、トリガーが発動した後に「実行される動作」のことです。
「〇〇する」の部分がアクションです。
日常生活のアクション例
炊飯器
トリガー:炊飯ボタンを押す
↓
アクション:
1. 水温を測る
2. 加熱を開始する
3. 温度を調整する
4. 蒸らす
5. 保温に切り替える
6. 完了音を鳴らす
エレベーター
トリガー:3階のボタンを押す
↓
アクション:
1. 現在階を確認する
2. 上昇/下降を判断する
3. モーターを動かす
4. 3階で停止する
5. ドアを開ける
ビジネスでよく使うアクションの種類
1. 通知・連絡系アクション
例:
- メールを送信する
- Slackにメッセージを投稿する
- LINEで通知する
- プッシュ通知を送る
2. データ操作系アクション
例:
- スプレッドシートに記録する
- データベースを更新する
- ファイルをコピーする
- PDFを作成する
3. 処理実行系アクション
例:
- 計算を実行する
- 画像をリサイズする
- テキストを翻訳する
- QRコードを生成する
4. 外部連携系アクション
例:
- SNSに投稿する
- カレンダーに予定を追加する
- タスクを作成する
- 請求書を発行する
アクションの組み合わせ
複数のアクションを連続して実行することで、より複雑な処理も可能になります。
条件(Condition)= もし〜なら
条件とは?
条件は、「ある状況の時だけ」アクションを実行するための仕組みです。
「もし〇〇なら△△する、そうでなければ××する」という判断を行います。
日常生活の条件例
自動販売機
トリガー:お金が投入される
↓
条件チェック:
- もし投入金額が商品価格以上なら
→ 購入ボタンを光らせる
- そうでなければ
→ ボタンは光らせない
エアコンの自動運転
トリガー:1分ごとに温度をチェック
↓
条件チェック:
- もし室温が設定温度より高いなら
→ 冷房を強める
- もし室温が設定温度より低いなら
→ 冷房を弱める
- もし設定温度と同じなら
→ 現状維持
ビジネスでの条件活用例
例1:経費申請の自動承認
トリガー:経費申請が提出される
↓
条件チェック:
- もし金額が1万円未満なら
→ 自動承認してメール通知
- もし金額が1万円以上5万円未満なら
→ 課長に承認依頼メール
- もし金額が5万円以上なら
→ 部長に承認依頼メール
例2:顧客対応の自動振り分け
トリガー:問い合わせフォームが送信される
↓
条件チェック:
- もし「料金について」が選択されているなら
→ 営業部にメール転送
- もし「技術的な質問」が選択されているなら
→ サポート部にメール転送
- もし「その他」なら
→ 総務部にメール転送
条件の種類
1. 比較条件
- 等しい(=)
- より大きい(>)
- より小さい(<)
- 以上(≧)
- 以下(≦)
- 等しくない(≠)
例:在庫数が10個以下、売上が目標値以上
2. テキスト条件
- 含む
- 含まない
- で始まる
- で終わる
- 完全一致
例:件名に「緊急」を含む、メールアドレスが「@gmail.com」で終わる
3. 日時条件
- 特定の曜日
- 営業日/休日
- 時間帯
- 期限前/期限後
例:平日の9-18時、締切3日前
4. 複合条件
- かつ(AND)
- または(OR)
- ではない(NOT)
例:平日かつ9時以降、VIP顧客または購入金額10万円以上
3つの要素を組み合わせる
シンプルな組み合わせ例
例1:朝のアラーム
トリガー:時刻が7:00になる
↓
アクション:アラーム音を鳴らす
例2:メール自動返信
トリガー:メールを受信する
↓
アクション:定型文を返信する
条件を加えた組み合わせ例
例3:スマートな在庫管理
トリガー:毎日18:00になる
↓
条件:もし在庫が20個以下なら
↓
アクション:
1. 発注メールを送信
2. 管理者にSlack通知
3. 在庫表を更新
例4:顧客フォローの自動化
トリガー:新規顧客が登録される
↓
条件1:もし個人顧客なら
↓
アクション:
1. ウェルカムメールAを送信
2. 初回クーポンを発行
条件2:もし法人顧客なら
↓
アクション:
1. ウェルカムメールBを送信
2. 営業担当者に通知
3. 見積書テンプレートを送付
複雑な組み合わせ例
例5:問い合わせ対応の完全自動化
トリガー:問い合わせフォームが送信される
↓
条件1:もし営業時間内(平日9-18時)なら
↓
条件1-1:もし「緊急」にチェックありなら
↓
アクション:
- 担当者の携帯に即座に通知
- 自動返信「30分以内に返信します」
条件1-2:もし通常の問い合わせなら
↓
アクション:
- 担当部署にメール転送
- 自動返信「1営業日以内に返信します」
条件2:もし営業時間外なら
↓
アクション:
- 自動返信「翌営業日に対応します」
- 翌朝9時に担当者へリマインド
実践的な設計の考え方
ステップ1:目的を明確にする
まず「何を自動化したいか」を明確にします。
例:「お客様からの問い合わせに、素早く一次返信したい」
ステップ2:現在の流れを書き出す
1. メールを受信
2. 内容を確認
3. 緊急度を判断
4. 返信文を作成
5. 送信
ステップ3:自動化できる部分を特定
1. メールを受信 → トリガーにできる
2. 内容を確認 → 条件で判断できる
3. 緊急度を判断 → 条件で判断できる
4. 返信文を作成 → 定型文を用意
5. 送信 → アクションで自動化
ステップ4:要素に分解
トリガー:メール受信
条件:件名に含まれるキーワードで判断
アクション:適切な定型文を自動返信
設計のコツ
- 最初はシンプルに始める
- 徐々に条件を追加して賢くする
- エラーの場合も考慮する
- テストしながら改善する
よくある質問
Q: 条件が複雑になりすぎたらどうする?
A: 条件は階層的に整理しましょう。
Q: トリガーは1つしか設定できない?
A: 多くのツールで複数のトリガーを設定できます。
- トリガーA または トリガーB で起動
- トリガーA かつ トリガーB で起動
Q: アクションが失敗したらどうなる?
A: エラー処理も自動化できます。
今日のまとめ
3つの基本要素
- トリガー:自動化が始まるきっかけ(〜したら)
- アクション:実行される動作(〜する)
- 条件:動作を制御する判断(もし〜なら)
この3つを組み合わせれば、どんな自動化も作れます!
次回予告
次のレッスンでは、これらの要素を「フローチャート」で視覚的に表現する方法を学びます。
- フローチャートとは何か
- 基本的な記号と使い方
- 実際に自動化を設計してみる
図で描くことで、複雑な自動化もスッキリ理解できるようになります!
チャレンジ問題
問題1:要素を見分けよう
以下の自動化の例から、トリガー・アクション・条件を見分けてください。
「毎朝8時に、今日の天気が雨なら『傘を忘れずに』というLINE通知を送る」
答えを見る
- トリガー:毎朝8時になる
- 条件:今日の天気が雨
- アクション:『傘を忘れずに』というLINE通知を送る
問題2:自動化を設計しよう
以下の状況を自動化するには、どんなトリガー・アクション・条件が必要でしょうか?
「お客様から注文メールが来たら、在庫があれば『承りました』と返信し、在庫がなければ『在庫切れです』と返信したい」
答えの例
- トリガー:注文メールを受信
- 条件1:在庫あり
- アクション1:「承りました」メールを返信
- 条件2:在庫なし
- アクション2:「在庫切れです」メールを返信
追加で考えられるアクション:
- 在庫ありの場合:在庫数を1減らす、発送準備リストに追加
- 在庫なしの場合:入荷通知希望リストに追加、仕入れ担当に通知
問題3:日常生活で自動化設計
あなたの日常生活で「これが自動化できたら便利」と思うものを1つ選び、トリガー・アクション・条件を設計してみましょう。
設計例
朝の準備サポート自動化
お疲れさまでした!これで自動化の基本要素をマスターしました。次回のフローチャートで、さらに理解を深めていきましょう!