はじめに
前回のレッスンで、繰り返し作業に費やしている時間の多さに気づいていただけたでしょうか?
今回は、その解決策である「ワークフロー自動化」について、じっくりと理解していきましょう。
でも、ちょっと待ってください。
「ワークフロー」?「自動化」?
なんだか難しそうな言葉が出てきましたね。
大丈夫です! 実は、とってもシンプルな概念なんです。
そもそも「ワークフロー」って何?
ワークフロー = 仕事の流れ
ワークフローとは、簡単に言えば「仕事の流れ」のことです。
朝起きてから会社に行くまでの流れを考えてみましょう:
1. 目覚ましが鳴る
2. 起きる
3. 顔を洗う
4. 朝食を作る
5. 朝食を食べる
6. 歯を磨く
7. 着替える
8. 家を出る
9. 電車に乗る
10. 会社に着く
これも立派な「ワークフロー」です!
ビジネスでのワークフロー例
経費精算のワークフロー
社員:レシートをもらう
↓
社員:申請書に記入
↓
社員:上司に提出
↓
上司:内容を確認
↓
上司:承認(または差し戻し)
↓
経理:内容を確認
↓
経理:振込処理
↓
社員:入金確認
新規顧客対応のワークフロー
お客様:問い合わせフォームから連絡
↓
担当者:メール受信
↓
担当者:内容確認
↓
担当者:顧客情報をCRMに登録
↓
担当者:返信メール作成
↓
担当者:上司の確認
↓
担当者:メール送信
↓
担当者:フォローアップ予定を登録
ワークフローの特徴
- 決まった順番がある
- 関係者が複数いることが多い
- 判断や承認が含まれる
- 繰り返し行われる
「自動化」とは?
人がやっていたことを機械やシステムにお任せ
自動化とは、今まで人間が手作業でやっていたことを、機械やコンピュータが代わりにやってくれるようにすることです。
身近な自動化の進化
洗濯の進化
150年前:川で手洗い(2時間)
↓
100年前:洗濯板とたらい(1時間)
↓
50年前:二槽式洗濯機(30分)
↓
現在:全自動洗濯機(ボタン1つ)
炊飯の進化
昔:かまどで火加減を見ながら(1時間以上)
↓
現在:炊飯器にお米と水を入れてボタンを押すだけ
さらに:タイマー設定で好きな時間に炊き上がり
ワークフロー自動化 = 仕事の流れを自動で
つまり、ワークフロー自動化とは:
ワークフロー自動化とは
今まで人間が手作業で行っていた「仕事の流れ」を、コンピュータやツールが自動で実行してくれるようにすることです。
身近な例で理解するワークフロー自動化
例1:モーニングコールサービスの進化
昔(完全手動)
1. ホテルのフロント係が時計を見る
2. 6時になったら名簿を確認
3. 部屋番号を確認
4. 電話をかける
5. 「おはようございます。6時になりました」
6. 次の部屋に電話...(繰り返し)
現在(自動化)
1. お客様がチェックイン時に希望時間を入力
2. システムに自動登録
3. 指定時間になったら自動で電話
4. 録音音声が流れる
5. 応答がなければ再度電話(スヌーズ機能)
効果:
- フロント係の負担軽減
- 時間の正確性向上
- 人的ミス(かけ忘れ)がゼロに
例2:レストランの予約システム
昔(電話予約のみ)
お客様:電話をかける
↓
店員:電話に出る
↓
店員:予約台帳を確認
↓
店員:空き状況を伝える
↓
お客様:日時を決める
↓
店員:手書きで記入
↓
店員:復唱して確認
現在(オンライン予約)
お客様:予約サイトにアクセス
↓
システム:空き状況を表示(自動)
↓
お客様:希望日時を選択
↓
システム:予約確定(自動)
↓
システム:確認メール送信(自動)
↓
システム:前日にリマインド(自動)
例3:図書館の本の貸出
昔
1. 利用者が本を選ぶ
2. カウンターに持っていく
3. 司書が貸出カードを確認
4. 本のカードに日付印を押す
5. 貸出台帳に記入
6. 返却期限を伝える
現在
1. 利用者が本を選ぶ
2. セルフ貸出機にICカードをタッチ
3. 本のバーコードをスキャン
4. 自動で貸出処理
5. レシート印刷(返却期限明記)
6. 期限前に自動でメールリマインド
ビジネスでのワークフロー自動化
請求書処理の自動化
Before(手動)
1. 請求書がメールで届く(PDF)
2. 印刷する
3. 内容を目視確認
4. Excelに入力
5. 承認印をもらいに行く
6. 経理に提出
7. ファイリング
時間:30分/件
After(自動化)
1. 請求書がメールで届く
2. AIが自動で内容を読み取り
3. システムに自動入力
4. 金額や項目を自動チェック
5. 承認者に自動通知
6. 承認後、自動で経理システムへ
7. デジタル保管
時間:2分/件(確認のみ)
顧客フォローの自動化
Before(手動)
営業:新規顧客リストを見る
営業:1週間後にフォローメールを送る(忘れがち)
営業:1ヶ月後に電話する(さらに忘れがち)
営業:3ヶ月後に新商品案内(もう覚えていない)
After(自動化)
設定:フォローアップの流れを一度設定
実行:
- 商談終了と同時にシステムに登録
- 1週間後:お礼メール自動送信
- 1ヶ月後:電話リマインド通知
- 3ヶ月後:新商品案内自動送信
- すべての行動履歴が自動記録
ワークフロー自動化の基本パターン
1. トリガー型(きっかけで動く)
「○○が起きたら、△△する」
例:
- メールを受信したら → 自動で振り分け
- 注文が入ったら → 在庫を自動確認
- 月末になったら → レポートを自動作成
2. スケジュール型(時間で動く)
「毎日○時に△△する」
例:
- 毎朝9時に → 売上データを集計
- 毎週月曜に → 週報のテンプレートを送信
- 毎月1日に → 請求書を自動発行
3. 条件分岐型(判断して動く)
「もし○○なら△△、そうでなければ××」
例:
- 金額が10万円以上なら → 部長承認へ
- 在庫が10個以下なら → 自動発注
- 新規顧客なら → ウェルカムメール送信
プログラミングとの違い
よく聞かれる質問:「自動化にはプログラミングが必要?」
朗報!プログラミング不要です
現代のワークフロー自動化ツールは「ノーコード」「ローコード」と呼ばれ、プログラミング知識なしで使えます。
違いを料理で例えると
プログラミング
1. 包丁の作り方から覚える
2. 調理器具を自作する
3. レシピを一から考える
4. 細かい温度管理も自分で
ワークフロー自動化ツール
1. 既にある調理器具を使う
2. レシピ集から選ぶ
3. 材料を入れるだけ
4. ボタンを押せば完成
実際の操作イメージ
プログラミングの場合
import email
import imaplib
def check_email():
mail = imaplib.IMAP4_SSL('imap.gmail.com')
mail.login('user@example.com', 'password')
mail.select('inbox')
# ... 複雑なコードが続く
自動化ツールの場合
1. 「Gmail」アイコンをドラッグ
2. 「新着メールを受信したとき」を選択
3. 「Slack」アイコンをドラッグ
4. 「メッセージを送信」を選択
5. 送信内容を入力
完成!
なぜ今、ワークフロー自動化が注目されているのか
1. ツールが使いやすくなった
- 日本語対応
- 直感的な操作画面
- 豊富なテンプレート
- スマホからも設定可能
2. 連携できるサービスが増えた
- Gmail、Outlook
- Slack、Teams、LINE
- Google スプレッドシート、Excel
- Twitter、Instagram
- 会計ソフト、CRM
- その他1000以上のサービス
3. コストが下がった
- 無料プランの充実
- 月額1000円程度から本格利用可能
- 初期投資不要
4. 働き方が変わった
- リモートワークの普及
- 業務のデジタル化
- 人手不足の深刻化
- ワークライフバランス重視
よくある誤解を解く
誤解1:大企業向けの話でしょ?
真実:個人事業主や小さなチームこそ効果大
- 少人数だからこそ自動化の恩恵が大きい
- 1人で10人分の仕事ができるように
誤解2:ITに詳しくないと無理?
真実:スマホが使えれば大丈夫
- 画面の指示に従うだけ
- 困ったらサポートも充実
誤解3:自動化したら融通が利かない?
真実:いつでも変更・停止可能
- 設定は簡単に修正できる
- 必要に応じて手動に切り替えも可能
誤解4:セキュリティが心配
真実:むしろセキュリティ向上
- 大手企業も使う安全なツール
- 人的ミスによる情報漏洩を防げる
- アクセス権限を細かく設定可能
今日のまとめ
覚えておいてほしい3つのこと
- ワークフロー自動化 = 仕事の流れを自動で実行すること
- プログラミング不要で、誰でも始められる
- 身の回りの自動化と同じように、仕事も自動化できる
次回予告
次のレッスンでは、自動化の「基本要素」について学びます。
- トリガー(きっかけ)とは?
- アクション(動作)とは?
- 条件(もし〜なら)の使い方
これらを理解すれば、どんな自動化も設計できるようになります!
チャレンジ問題
問題1:身の回りのワークフローを見つけよう
あなたの1日の中から「ワークフロー」を3つ見つけて、流れを書き出してみましょう。
ヒント
考える視点:
- 毎日/毎週やっていること
- 複数のステップがあること
- 他の人も関わること
例:
- コンビニでの買い物
- 電車の定期券更新
- 病院の予約と受診
問題2:自動化できそうな部分を探そう
問題1で見つけたワークフローの中で、「ここは自動化できそう」という部分に印をつけてみましょう。
答えの例
朝の準備ワークフロー
- 目覚まし時計が鳴る ← ⭐すでに自動化
- 天気予報を確認 ← ⭐スマホで自動表示可能
- 朝食を作る ← ❌物理的作業
- ニュースをチェック ← ⭐AIが要約を自動作成可能
- 予定を確認 ← ⭐カレンダーアプリで自動リマインド
問題3:理想の自動化を想像しよう
「こんなことが自動化できたらいいな」と思うことを3つ書いてみましょう。実現可能かは気にせず、自由に想像してください。
例:
- 冷蔵庫の中身を見て、自動で献立提案
- 体調に合わせて、室温を自動調整
- 買い物リストを自動で作成して、最安値の店を教えてくれる
素晴らしい!これで「ワークフロー自動化」の概念が理解できました。次のレッスンで、具体的な仕組みを学んでいきましょう!